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怒ってる邦ロック私的3選

怒りを失ったら人間じゃなくなるよ。

何で見たのか、だれに言われたんだったか思い出せないがその言葉がたまに脳を焦がす。

のうのうとなんでもない顔で飯を食い音楽を聴き電車に乗る普段の自分に、急に嫌気がさす。

…怒りをくれ。もっともっと怒りたい。人間になりたいんだ。

そして音楽を聴く。めいっぱいの怒りを全力でぶつけてほしい、着火してよ、わたしの甘ったれた精神に今すぐ。

そんな思いで聴く歌たち。まだまだあるけど、愛してやまない3曲を。

 

⓵ハルカトミユキ/ニュートンの林檎

ハルカトミユキ。それは、人気のJ-POPしか聴いたことなかったわたしをロックに出会わせてくれたバンドで、自分にとっては原点にして頂点です。怒ってる曲はたくさんあります(キャッチーな音楽にのせてひたすら嫌いだと言い続ける「Hate you」、不気味なメロディーでひたすら怒りをぶちまける「近眼のゾンビ」、愛するあまりの怒りと悲しみに溢れた「Pain」など…語り出したら止まらないのでとりあえずこの辺で切る)。

しかし「ニュートンの林檎」はやっぱり怒りの度合いが突き抜けている。

MVのハルカはその大きな目をひん剥いて歌う。

「勝てないお前が悪い」

「勝てない私が悪い」

このフレーズの応酬が続く。自分が悪いと認めたかのようにも思える歌詞だが、メロディーや彼女の表情からは、ある種の怒りが読み取れる。

それは、大声で騒ぎ立てる、怒鳴る、暴れる、そんな子供染みた行動を通り越した、「軽蔑」という名の怒りだ。

決して諦めたわけじゃない、悪いなんて全然思ってないから見てろ、という決意を孕んだ目。

初めて聞いたのは高1だったと思う。よくぞ言ってくれた、わたしの言いたかったこと全部歌ってくれる人がいた、と震えた。

ちなみにライブだとMVや音源以上にダイレクトに怒りが伝わってきます。最高です。是非。

 

⓶乗車権/BUMP OF CHICKEN

これは怒りというより恐怖の曲かもしれない…初めて聞いたときは怖っ!と思ったし今も聞くたびにヒヤッとする。ボーカルの藤原くんの声は綺麗な温かみのある声に慣れてるから尚更。この曲は歌詞も鋭利だしメロディーもなんだか不安定で危うい感じ。ボロい電車に何百人もの人がぎゅうぎゅう詰で、いまにも事故を起こしそうなのにフルスピードで駆け抜けてる、そういう情景が浮かぶ。

「泣き落としで順番譲る馬鹿がいた」

「どけ そこどけ」

バンプの他の歌の歌詞では出てこない雰囲気の、凶暴な歌詞たちが、電車に乗れないことへのイライラをぶつけてくる。藤原くんの声はとても怒っている。

そしてやっと苦労して電車に乗れたのに…!という最後のオチ。もう彼の声は怒っていなくて、なにかをぷっつりと諦めてしまった、そんなふうに聞こえる。

正体の分からない何かに振り回される恐怖。怒っても、叫んでも、逃れられない。

恐怖の中にある怒り、怒りの中にある恐怖。

かなり壮絶な曲だ。凄まじい!

バンプの最近の曲も嫌いではないのだけど、もっと怒ってくれてもいいのにと思わずにはいられない。今はもう背負うものが大きくなりすぎて、難しいのかもしれないけれど…。藤原くんの怒り狂った歌声がもっと聞きたいよ。

 

赤紙/黒木渚

黒木渚はことし自分が聞いたアーティスト1位だったらしい。現在の自分の感覚に、ぴったりハマるようだ。だいたいどんなに好きなアーティストのアルバムにだって「あんまり響かないな」という曲があるものだが(あくまでも自分は)、黒木渚にはそれがない。ほとんど全部の曲を聞き倒している。思えば今年唯一行けたのは黒木渚の1月のライブだった。。演劇みたいだと思うくらい凝った演出と、力強い歌声に痺れました。

…とまあ黒木語り(?)はこの辺にして。

赤紙はこんなフレーズから始まる。

「うちに赤紙が届いて
「喜べ」と言った父上
白い骨だけ帰って来た
娯楽も知らぬまま死んだ」

…この部分だけでも、曲の背景が見えてくる。曲を聴いているうち、主人公の置かれた状況、心情がまるで映像化されたかのように流れ込んでくる。

「被害者ヅラして生きてくなど
到底できない性分で
今日も泣くのです
ライトの影 悟られぬように」

家族を戦争によって理不尽に奪われた悔しさ。悲しさ。何かにぶつけようにも矛先を向けようのない、怒り。

まるで戦争の時代を生きた女性が、黒木さんに憑依したかのように、その歌声は痛切な響きをもって叫び続ける。

この曲を聞くたび、歌のパワーを実感します。ここまで誰かの人生を表現することができるとは、と。

歌における無限の可能性を感じさせてくれる曲です。

 

以上三曲でした!

だれかに自分の心を土足で踏み荒らされるのは嫌だけど、音楽にならそうされても構わない。耳に心地よいものばかりでなく、やっぱりここぞというときには、頼んでもないのに勝手に必殺パンチをきめてくるような曲を聴きたいです。そういう曲が必ずしも大衆ウケするとは限らないのが悔しいけど(素晴らしい音楽に出会うたび、評価と実力が追いついていないアーティストの多さに泣きたくなる)、時にはふざけんなよ!という怒りを詰め込んだような人間くさい曲を、アーティストの皆さんには歌ってほしいなと思います。おこがましくてすみません…。

そしてそんな音楽の助けも借りつつ、つねに何かに(ポジティブな)怒りを抱いているような人間でいたい。

いくら年取っても、怒りを忘れんなよ?自分。

#ハルカトミユキ

#BUMP OF CHICKEN 

#黒木渚

#音楽