ながい電車に乗りながら思い出していたこと
スリランカ37日目。
今、私はガタガタ動く電車に乗って、エッラという街から、滞在先のコロンボまで向かっているところです。なんと移動時間は、10時間超。日本の電車と比べると、かなりゆっくりペースで、人々を目的地へと運んで行きます。
電車に揺られるうちに、スリランカへ飛ぶ飛行機を深夜の空港でひとり待っていたときのことを、思い出しました。そのときのことを振り返ってみたくなり、これを書いています。
この国に来る前、「スリランカ」という国について知っていたのは、インドの下にある、独特の形の小さな島国だということ、紅茶で有名だということ、西洋諸国の植民地だったということ、本当にそれが全てでした。
この国に来たのは、スリランカでプログラム(スリランカで、世界から集まった大学生と一緒に観光に関するインターンをする)を行うためです。このプログラムを紹介してくれたのは、他大学の大学生たち。わたしの「海外で長期間過ごしてみたい、多文化交流したい」というすごくぼんやりとした願望を現実にすべく、細かいところまで抜かりなく、必要なプロセスを作り上げて、実現させてくれました。やる気がなくなりかけていた時も、何度も親身になって話を聞いてくれました。「伴走者」として一緒に走ってくれる彼らがいなければ、臆病なわたしはきっと、いつまでたっても願望を実現できなかったでしょう。
渡航してからも、何度も電話して、細かい進捗確認をしてくれる頼もしさには感謝しかありません。
彼らが、わたしに対してどんなビジョンを持ってくれているのか?どんな風にこの経験を自分の将来に生かして行きたいと思っているのか?帰国後、率直に尋ねてみたいと思っています。
そして、彼ら以外にも、夢を応援してくれる人たちと出会ったことや、両親の後押しのおかげで、スリランカへの渡航が正式に決まりました。
ただ、出発するまでは、実感がわかなかった。
「海外だー!楽しみ」ではなく、「不安だ、行きたくないな」でもなく、「ああ、行くんだな…わたし」という、どこか諦念にも似た気持ちでした。なんだか信じられなかったのです。
"1人で空港に行き、乗り継ぎし、1人でスリランカに辿り着かなければいけない。着いた後は、現地の大学生のサポートのもと、世界各国からの13人もの大学生と同じ家に住み、6週間にわたる観光プログラムを遂行する。日本人は1人。英語しか通じない。もちろん帰国も1人。"
そんな過酷とも言える環境を、自分が本当に望んで、自分の意思で決めた、ということが。
「海外で長期間過ごしてみたい、多文化交流したい」…そんな夢を持ち始めたルーツは、おそらく浪人した一年間にあります。
いくらやっても上がらない偏差値。遠のいていくゴール。本当に学歴だけが人生を決めるのか?
勉強部屋の窓から見ていた青い空。
浪人は、自分で決めたことです。それでも私は、籠の中の鳥になったような気持ちでした。夢を叶えて進学した同級生の近況が耳に入って来る度に、世界から一人隔離されているような気持ちになっていました。
そんな自分に、いつも未知の世界を教えてくれたのは、新聞でした。
朝起きて、新聞を広げれば、そこにはいつも、新しいニュースが載っている。会ったことのないだれかが、自分の知らない世界について語ってくれる。海外・日本という括りだけでなく、憲法、医学、政治、文学、絵画…本当に多岐に渡る「世界」。こんなにも、世界は広いんだ、自分の知らない世界があるんだ。知らない世界を、もっと知りたい。分かりたい。現実逃避と言われたら、そうかもしれません。でも当時の私にとっては、そんな漠然とした「知らない世界への憧れ」が、浪人時代の心の支えでした。
そして、大学に入った後は、国際に関心のある学生同士でチームをつくって活動したり、社会問題について考える団体の活動に参加したり、音楽ボランティア活動に携わったり、日本に来た留学生との交流プログラムに参加したりと、自分の「世界」を広げるために努力しました。
でも、活動を続けるうちに、結局なにがしたいのか、全て中途半端になっているのではと、焦りを感じ始めました。
知らない世界について、たくさん知っても、この身体はひとつだけ。いずれは職に就き、自分で安定した生活を作り上げなくてはいけません。
「将来なにがしたいのか?」…その問題に向き合わなくてはいけないときが来たように感じました。
6週間…長いな、と最初は思いました。英語しか使えない環境も、まだ自分には早いのでは、と思いました。でも、留学生とのプログラムで感じた英語のコミュニケーション能力の無さを、克服したかった。
何より、ずっと大切にしてきた国際関係への関心を、これからの将来に活かしたいのかどうか見極める、絶好のチャンスだと感じました。
飛行機は予定通りに飛びました。
スリランカで考えたことは、またこんど。
わたしの長いお話に付き合っていただき、ありがとうございます。
また更新します。